vol.4レーシングを通じて自発的な学びをひきだす(日本自動車大学校) - レーシング用アルミラジエーター | DRL | DAIWA RACING LABO

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Interview

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vol.4レーシングを通じて自発的な学びをひきだす(日本自動車大学校)

interviewee:日本自動車大学校 モータースポーツ科/ドライバー 金井 亮忠さん(モータースポーツ科科長・講師)・鈴木 匠さん(学生・メカニック担当)・レーシングドライバー 猪爪 杏奈さん

2021.12.29

(取材日:2021年11月14日 スーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankook 第6戦 TKU スーパー耐久レース in 岡山国際サーキット)

日本自動車大学校(通称NATS)は、千葉県成田市にあるモータースポーツのための人材育成と車両整備の未来の人材を育てる専門学校。自動車整備科をはじめ、モータースポーツ科、カスタマイズ科、自動車研究科を配しています。東京ドーム3個分の広大なキャンパス内にはサーキットコースを備えており、実践教育を通じて時代をリードする究極のエンジニアを育てています。

今回のS耐第6戦にはMAZDA ROADSTERで日本自動車大学校と iCraftの合同チームで参戦。
チームのAドライバーであり、モータースポーツ科で教鞭をとっていらっしゃる金井先生と、
モータースポーツ科の学生鈴木さん、女性ドライバーの猪爪杏奈さんにお話を伺いました。

毎日をともに過ごす仲間の一体感が強みです
■金井 亮忠さん(日本自動車大学校・教員)

学生たちの指導を行う金井先生

今回のレースには、モータースポーツ科の学生さんが参加されているとのことですが、人数はどのくらいですか?

S耐のチームとしては6名が参加しています。
現在モータースポーツ科には17 人が所属していて、 その中で3つのチームに分かれて活動をしている形です。

学生さんたちは何年くらい勉強されるのですか?

うちの学校は、高校を卒業した生徒が入学して、まず2年間の過程で学んで二級整備士の資格をとります。
モータースポーツ科はそのあとのさらに1年課程のコースで、合わせると在学期間3年になります。

S耐には去年から参戦されているそうですが、参戦の経緯を教えてください。

もともと学校としては フォーミュラカーとツーリングカーのレースということで、
JAF-F4レースと学生たちが自分たちでドライバーをやれる耐久レースに参加していました。
現在のS耐チームの監督がiCraft(アイクラフト)というチームを立ち上げて、
僕もプライベートで一緒にナンバー付きの耐久レースに参戦していたんですけれど、
『ステップアップして S 耐をやりたいね』という話になったんですよ。
だったら学校とコラボして、クルマづくりとかメンテナンスとか授業の一環でやらせてもらいながら、
一緒にステップアップしていこうと。

僕自身も小学生の頃からずっとレースをやっていて、
カートからはじめて今もフォーミュラカーにも乗らせてもらっていますが 、
学生の教育とプロじゃないけどもっと上のカテゴリを目指したいというドライバーさんと、
みんなで成長していこうというスタンスで始めたのがきっかけです。

3人のドライバーで(金井先生/猪爪選手/岡田選手)
チームを担う頼もしい学生たち

F4と今回のS耐は取り組み方としてどういう違いがあるのですか?

F4は学校が一台所有していて、我々はコンストラクター(製造者)として参加して、
学生たちと一緒に車をつくっています。うちはメーカーとして出ているんですが、
そういった「ものづくり」の一環としてずっと続けています。

こっち(S耐)はチームから依頼を受けて、ノーマル(ナンバー付きの)ロードスターから
この学校でS耐用の車をつくって、普段のメンテナンスとかピットの作業とかを学生たちがやっています。
基本的にはレーシングチームと同様のことをやっていますね。

学生さんたちが卒業して、実際にこういったレースの世界で働きたいなとなったときに
より実戦に近い経験があるというのはいいですね。それも参戦の理由ですか?

やっぱりスプリントレースだと決勝が始まっちゃうとあとはドライバー任せみたいになっちゃいますが、
スーパー耐久だとメカニックのウエイトもどんどん大きくなってきますしね。

ピットの中は真剣そのもの

学生さんたちにもいい影響がありそうですね。
一方で実戦の場で学生を指導しながら、同時にレースをやっていくというのはかなり難しいのでは?

他のチームからするとすごく大変に感じられるかもしれませんが、
僕らはそれが職業でもあるし、 そのため(指導するため)にやっているというのもありますしね。
あと強みとしてはメカニックもドライバーもエンジニアも、 みんな常に一緒にいるメンバーですからね 
そこがすごい強みなんですよ。
お互いの事がよく分かるし、車を作るにしても僕がドライバーを務めることで
フィードバックをすぐに 伝えられるし、
メカニックも僕が教えているので一緒にクルマ作りをすることができますからね。
常に一緒にコミュニケーションをとることで改良をすすめています。

それと、メンテナンスの重整備に関して言えば、普通のチームだと整備をやればやるだけ商売ですが、
僕たちは商売ではなく勉強のためにやるので、 壊れたから直すんじゃなくて、
壊れなくてもオーバーホールをしたりとか、 それが学生の勉強になりますからね。
ある意味、他のチームよりも細かいところまで常にクルマを見ることができたりしますね。
学校の中にも小さいですけれども、サーキットもあるので、
仕上げたらそこでチェックで走らせてもってきています。

入念に調整ができますね。

レース前のピット作業の練習なども、学生たちがいるので学校で練習して
現地にきて、最終的にもう一回調整して、というような感じです。
常に一緒にいることで、寄せあつめではない一体感がありますね。

コースからの入庫を迎える
きちんと並べられた道具
ラジエーターにはDRLを採用

実際学生さんは変わってきた感じはありますか?

いやもう一年で全然違います。もうほうっておいても搬入から普段のメンテナンスまで自主的にやってくれて、
あとはチェックするだけです。飲み込みも成長もはやいですね。
残念なのは一年で卒業しちゃうことなんですよ。
学生が卒業すると全部1からですね。
毎年チームが変わります。

なかなか他にはないカリキュラムですね。

複数学年あれば、学生間の引き継ぎができていいんですけどね。
うちは(モータースポーツ科は1年間なので)4月から3月までで終わりなんでね。
4月に整備士のコースからあがってきて、クルマも初めて触るし、
サーキットにも初めて来る、というところからのスタートです。
卒業してレーシングの世界でプロのメカニックになる子もいますし、
一般車のディーラーさんに行く学生もいますよ。

2年終わってさらにもう一年学ぶとなると、学生さんの目標がはっきりしているというか、より明確になりますね。それで今回の3位入賞という結果は素晴らしいですね!!

ありがとうございます。

より深く知ることで、車が一層楽しくなりました
■日本自動車大学校 鈴木 匠さん(学生・メカニック担当)

さわやかにインタビューに答えてくれた鈴木さん

このチームでの役割はどういったものですか?

基本的には班長というかたちでやらせてもらっていて、
ピット作業では最初はドライバー交換の補助から担当していたのですが、
後半からはずっとエアジャッキを担当しています。

学生同士こういう取り組みをするというのは、どんな感じですか?

遠征がいっぱいあったりするので楽しいです。
学校での作業はもちろんですが、学校外での関わりもあるので
そういうところは結構楽しいと思います。

これをやる前と、実際にやってみたあとではどうですか?

普段の整備以上に深く車を触るので、より一層車が楽しくなるというか、
深いところまで知ることができるからこそ、車のいいところがさらにわかってくるので、
自分にとってもすごくプラスになっています。

今年3月には卒業ですね。卒業後はどんなことをしたいと思っていますか?

レーシングチームに入る予定です。
この一年で学んだことをなるべく生かして
より一層成長できるように頑張りたいと思います。

これからが楽しみです。ありがとうございました。

フィールドではプロの表情
チームで相談
青空にブルーの車体が映える

速さでも見せられるドライビングを目指しています
■猪爪 杏奈さん(ドライバー)

キラキラの笑顔がまぶしい猪爪選手
試合前に日本自動車大学校のドライバーとともに

車はどういうきっかけで始められましたか?

父親の影響を受けて19歳で免許をとって、20歳からはじめました。
カートなどはやってないです。

これまでどういったレースに参加されましたか?

最初は電気自動車のレースに参戦しました。
翌年 21 歳のときに、マツダが自動車産業で活躍する女性を育成しようというプロジェクト
(Mazda Women in Motorsport Project)の2期生として 2016 年に加入して、
ここ岡山のロードスターパーティーレースで公式戦デビューし、
その年の日本一決定戦で予選ポールポジションをとりました。
その後もMWIMで育てていただきました。

すごいですね!!女性ドライバーって聞くだけでもワクワクします!

現在26歳で、6年目になります。
ただ、使っているマシンは(男女で)いっしょですからね。
このカテゴリではあまり(男女差が)ないので、純粋に男女関係なく勝負したいなと思っています。

かっこいいです!!なかなか女性ドライバーっていないように思いますが。

車が好きで始めるっていうとやはり男性のほうが多くなりますし、
世界的にみても女性は少ないのですが、それでも数年前に比べると女性も増えてきていています。
いま競走女子選手権という女性だけで行われるレースにも参戦していますが
女性の割合は増えていますね。

チーム(日本自動車大学校)の車両

レースの中で自分のこだわりというか、こういうところはすごく大事にしているというのはありますか?

うーん、そうですね、やっぱり女性だから出られるっていう見方をいつもされるので
速さでも見せられるように頑張っています。
あとは綺麗でいたいっていう思いもあります。
ヘルメットを脱いで降りた後も、きれいな顔でいられるようにお化粧とかもちゃんとして乗っています。

女性活躍というところで、マツダさんからも応援していただいておりますし
男性社会の中でもキラキラ輝いている姿を見せたいので、
「(走りが)速く、綺麗で、強い」っていうところをいつも目指して頑張っています。

まぶしい笑顔にピットが明るく

S耐への参戦はどのくらいになりますか?

はじめて参戦したときから数えると、シリーズは3年目になりますね。
同じロードスターです。
去年はこのチームで2年目でした。1年目はマツダのチームでしたよ。

ふだんのトレーニングは?女性と男性だと筋肉の付き方もちがいますよね。

そうですね、やっぱりホルモンのバランスなどもいろいろありますし、
体調をくずさないように、睡眠や食事などの摂取するものにもある程度気をつけています。
体力トレーニングでは持久力をつけて、
筋力トレーニングはあんまり重いものを持って重量選手みたいになっても仕方ないので
どちらかというと悪いバランスの中で体幹をしっかり鍛えられるような
バランスのとれるトレーニングをしています。

体育会系で育っているので、体力はある程度自信があったのですが、
やっぱりフォーミュラにも乗ったときに、体力差を感じましたね。
それをきっかけにトレーニングを見直してやっています。

まさにアスリートですね。同じ土俵に男性と乗らないといけないから大変ですよね。
女性だからって特別に違うって思われないように、輝いていけたらいいですね。

そうですね。大変ですけどやっぱりそれで勝ったときがすごく嬉しいです。
体力差はどうしてもありますが、それ以外のメンタルや食事というところで男性以上に気をつけて、
今後も勝てるように工夫したいですね。

それから、女性も頑張っているということを、 社会にもっと発信していけたらと思っています。
こんなに楽しいスポーツは他にないと思っているので
まずは国内でたくさんの方に興味を持っていただけるように、
私にできることを考えていきたいです。


金井先生の熱い思いを受けて、楽しそうにキビキビと動いている学生さんたち。
そのキラキラと輝く瞳とフレッシュな雰囲気に、スポーツならではの清々しさを感じました。
これからのモータースポーツ界を担う人材が、ここから生まれてゆくのが楽しみです。
本日はありがとうございました。

日本自動車大学校

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